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《Column vol.01》今、防ぐべき高齢者の転倒骨折

《Column vol.01》今、防ぐべき高齢者の転倒骨折

1)高齢化による転倒・骨折リスク

 日本の高齢者人口の割合は年々増加し、現在(2020年9月推計)、全人口の28.7%の3,617万人が65歳以上、後期高齢者(75歳以上)だけでも1,871万人となっています。65歳以上の3人に1人が1年間に1度以上の転倒を経験するという報告もあり、単純計算で年間に1,200万人以上の高齢者が転倒を経験していることとなります。その中で骨折(転倒以外の原因も一部含む)をしている方が約100万人、大腿骨の骨折をしている方が約25万人と推計されています。転倒や転落による死亡者数も増加しており、2020年の統計で9,585人もの人が亡くなっており、交通事故による死亡者数の3,718人を大きく上回っています。

 医療技術が発展したことにより、平均寿命は延伸しました。しかし、健康寿命(平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間)はどうでしょうか。日本の高齢社会の特徴として、平均寿命と健康寿命のギャップが挙げられます。平均寿命(2019年時点)は男性81.4歳、女性87.5歳ですが、健康寿命は男性72.7歳、女性75.4歳であり、男性で9年、女性で13年程度、なんらかの介護を要する期間があることになります。

令和4年版高齢社会白書(全体版)より引用

 要介護となる原因ランキングでは、第1位認知症(18.1%)、第2位脳血管疾患(15.0%)、第3位高齢による衰弱(13.3%)に次ぎ、転倒・骨折が第4位(全体の13.0%)となっています。

令和4年版高齢社会白書(全体版)より引用

 この背景にはサルコペニアやフレイルといった心身機能の低下が存在しています。さらには2019年末から世界的な大流行となったCOVID-19の影響で、外出の機会が減少し活動量が低下した高齢者は心身機能が低下し、転倒リスク・骨折リスクが高まった状態となってしまっています。

2)高齢者に多い骨折部位

 高齢者に起こりやすい骨折は4種類あります。脊椎圧迫骨折、上腕骨近位端骨折、橈骨遠位端骨折、そして大腿骨近位部骨折です。これらは高齢者の4大骨折と呼ばれています。4つの骨折の起きやすさは年齢により異なります。前期高齢者に多いのが、上肢の骨折であり、脊椎や大腿の骨折は後期高齢者で多くなります。この差は転びそうになった際に反射的に手が出せるかどうかによって、生じます。加齢により身体機能がある程度保たれている状態であれば、転びそうになった際に咄嗟に手で体を守ろうとします。そのため、前期高齢者では上肢の骨折が多くなります。身体機能が低下してくると反応が遅れ、そのまま床に体を床や地面に打ちつけることになり、結果として脊柱や大腿骨の骨折することになります。

 4大骨折の中でも大腿骨近位部骨折は予後が不良であることが非常に問題です。大腿骨近位部骨折の1年後の調査では死亡率が約20%にもなり、以前と同じように歩行ができた人は37-47%程度しかいなかったという報告があります。寝たきり生活の中で、誤嚥性肺炎、褥瘡などを併発し、ADL(日常生活活動)だけでなくQOL(生活の質)が著しく低下してしまう事例も少なくありません。そのようなことを防ぐために、日本転倒予防学会を中心に転倒や転倒による外傷を予防しようという取り組みがされています。

この記事を監修しました

杉浦 太紀

杉浦 太紀 / 取締役・理学療法士

転倒予防指導士・福祉住環境コーディネーター2級・整理収納アドバイザー2級

2010年から刈谷豊田総合病院で10年間勤務し、急性期から慢性期まで幅広い分野のリハビリテーションを経験。 2016年よりグロービス経営大学院に通学し、知り合った仲間とともに、株式会社Magic Shieldsを共同創業。

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