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《Column vol.02》転倒予防のための住環境整備

2023.08.05 Sat

《Column vol.02》転倒予防のための住環境整備

住宅に潜む転倒リスク

「家の中で転倒しやすい場所は?」と聞かれて、皆さんはどこを思い浮かべるでしょうか?床が濡れている風呂場や、段差のある階段などを思い浮かべる方が多いかもしれません。実は自宅の敷地内で転倒が多い場所は、1位は庭、2位は居間(リビング)、3位は玄関・ポーチ、4位は階段となっています。

出展:理学療法ハンドブックシリーズ18 転倒予防

1位の庭は、木の根や砂利などで不整な地面であることから、転倒しやすい場所であることは想像できます。しかし、2位の居間は意外だと感じる方がいらっしゃるかもしれません。なぜ、居間での転倒が多いのでしょうか?理由は、居間にはつまずきの原因となる障害物がたくさんあるからです。床に置きっぱなしにされたリモコンやカバン、扇風機やコタツのコード、カーペットなど捲れ上がりやすい敷物などがこれにあたります。WHO(世界保健機関)の転倒に関する報告でも、自宅内における転倒の要因として“小さな段差”、“敷物の緩み”、“乱雑な電気コードの配置”が挙げられています。

3位の玄関は、靴の履き替えや段差のほか、インターホンが鳴って焦って出ようとしてしまうことが転倒の原因として考えられます。4位の階段は、平地の移動より筋力が求められる動作であることから、筋力低下を認める高齢者は要注意な場所です。段差に対して足が上がりきっておらずつまずく、狭い踏み面で足を滑らせるなどが転倒の原因として挙げられます。

また、多くの方が転倒しやすい場所として思い浮かべる浴室での転倒の原因として、床面が濡れていることや高齢者の場合は入浴による血圧の変動が招くふらつきが考えられます。浴室と同じく転倒しやすい場所のイメージのあるトイレでは、出入り口に段差がある住宅が多いほか、高齢者は夜間にトイレへ行くことが多く、足元が暗いまま移動していることが転倒の原因として考えられています。先ほどのWHOの報告では“不十分な照明”も転倒リスクに挙げられているのです。

『今すぐできる』転倒予防のための住環境整備

 転倒対策としてすぐに思い浮かべるのは“手すりの設置”ですが、施工業者の下見や工事など、設置には意外と時間を要してしまいます。要介護認定を受けておられる方は、介護保険を利用して工事不要で簡便な置き型の手すりなどをレンタルすることができますが、この記事では『今すぐできる』住環境整備のポイントをお伝えいたします(手すりや杖などの福祉用具に関しては別記事で掲載予定です)。

ポイントは【よ い じゅ う た く】です。

よ:良い高さに物を置く

い:居間の整理

じゅ:絨毯(敷物)の固定

う:浮いた踵の履き物(スリッパやサイズの合わない靴)に注意

た:段差と床を区別する

く:暗い場所には照明をつける

このように、それぞれの整備ポイントの頭文字を取ると【よい住宅】になります。1つずつ確認していきましょう。

“良い高さに物を置く“と“居間の整理”は、リモコンやカバン、書類などを床に置かないことや、コード類を部屋の端に通すことが含まれます。

“絨毯(敷物)の固定”は、滑り止めシートや、端を画鋲などで止めて捲れないようにすることです。

“浮いた踵の履き物に注意”とは、スリッパを想像してください。スリッパは踵が固定されていないので、足をあげたつもりでもつまずいてしまうことがあります。また、フローリングや畳の上では滑りやすいため、高齢者では踵が固定されたルームシューズがオススメです。 

“段差と床を区別する”と“暗い場所には照明をつける”を実践することで、見えやすい環境を作ることができます。例えば、階段や部屋の段差の角に、床とは違う目立つ色のテープを貼るだけで目印になり、つまずきを防止できます。また、夜間は廊下や寝室の足元にライトをつけておくと暗い中での移動が安全になります。

いかがでしょうか?住環境の整備は転倒予防に有効と言われている対策の一つです。まずご自宅を見渡して【よい住宅】を実践してみることから始めてみてください。

この記事を監修しました

岡川 修士

岡川 修士 / 理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級・地域ケア会議推進リーダー・介護予防推進リーダー

2010年に理学療法士として入職した病院では、急性期〜回復期のリハビリテーションに加え、住民対象の介護予防事業に携わっていた。現在は、訪問看護ステーションかすたねっとにて、訪問リハビリに従事する傍ら(株)Magic Shieldsのコラムを担当している。

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