骨折と深い関わりのある疾病として、“骨粗鬆症”を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか?ご存知の通り、骨粗鬆症は「骨密度の低下、または骨の質の低下により骨が脆くなる」疾病です。弊社は骨折による転倒を防ぐことをテーマに活動をしているのですが、転倒と骨折を直結させないためには、骨自体が丈夫であることは欠かせません。つまり、骨粗鬆症をいかに防ぐかが骨折予防にとって重要となります。
実は骨粗鬆症にはリスク因子があり、なりやすい人が研究の成果から判明しています。そして現在では、ご自身で簡単に骨粗鬆症になるリスクがわかるFRAX®︎というインターネットサイトが存在しています。
今回の記事では、骨粗鬆症の概要、FRAX®︎の紹介、明日からできる骨粗鬆症対策をご紹介します。
骨粗鬆症の概要
概要と疫学
前述した通り、骨粗鬆症は「骨密度の低下、または骨の質の低下により骨が脆くなる」疾病です。骨粗鬆症では骨の代謝が破綻して、骨吸収(古い骨が壊される)が骨形成(新しい骨を作る)を上回ることで骨量が低下し、脆く質の悪い骨になってしまうのです。
骨粗鬆症患者は推定で1280万人であり、罹患率は女性の場合は、60歳代で5人に1人、70歳代で3人に1人、80歳代で2人に1人と言われています。
骨粗鬆症を診断する上でよく用いられるものに、DXA法があります。これはX線を骨粗鬆症により起こりやすい骨折部位である大腿骨(太ももの付け根)と腰椎(腰の骨)に照射することで骨密度を測定するものです。検査結果の用紙には「自分の年齢の平均と比較して」と「若者の平均と比較して」それぞれ何%かがわかります。重要なのは「若者…」の方で、YAM(young adult mean の略)値と呼ばれます。YAM値が70%を下回っていると骨粗鬆症の可能性が高くなります。
リスク因子
最近の研究では、様々な骨粗鬆症のリスク因子が判明しています。骨粗鬆症はこれらの因子が複合して影響する疾病なのです。代表的なものが、下記になります。
年齢:40歳代を境に骨密度の低下は進行していきます。
性別:閉経後の女性は女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、骨吸収が活発になります。
喫煙:喫煙は骨形成に必要なカルシウムやビタミンDの吸収を阻害します。
多量(ビール中瓶2本が目安)の飲酒:カルシウムの吸収を阻害します。
骨折歴:すでに骨密度が低下している可能性があります。
遺伝:家族に骨粗鬆症やそれによる骨折者がいる場合、リスクが高まります。
他にも、卵巣摘出や糖尿病、ステロイド薬の使用は年齢や性別関係なく骨粗鬆症の発症リスクを高めると言われています。
FRAX®︎の紹介
FRAX®︎は、先述の骨粗鬆症のリスク因子に関する12の質問項目(骨密度が不明な場合は11項目)をPCで入力するだけで、向こう10年の骨粗鬆症による骨折発生の確率を計算してくれる非常に簡便なインターネットのサイトです。一方で、骨粗鬆症を“診断する”ためのものではないこともご理解ください。
下記の例は、実際に2名の女性のFRAX®︎データを比較したものです。
年齢や身長・体重や生活習慣の項目にほとんど差のない2人ですが、Bさんは関節リウマチと診断されており、その影響でステロイドの服用があるようです。その2項目の影響で、Bさんは骨粗鬆症性骨折のリスクが23%となっています。
FRAX®︎は、算出された骨折リスクが15%を超える場合は、病院で骨密度の検査を受けることを推奨しています。
骨粗鬆症の予防策
骨粗鬆症にならないようにするためには、リスク因子となる喫煙やアルコールの多飲といった生活習慣を見直す必要があります。
また、骨形成を促進するような栄養素をしっかり摂ることも重要です。骨形成を促進する栄養素として、カルシウムとビタミンDが挙げられます。
カルシウムを多く含む食品:乳製品、豆腐、ひじき、小松菜など
ビタミンDを多く含む食品:鮭、きのこ類、卵黄など
さらに、日光浴によりビタミンDが生成されることもよく知られています。
転倒予防
骨粗鬆症による骨折を予防するという観点では、筋力を維持して転倒しにくい身体づくりも重要となります。運動習慣のない方は、先述の日光浴と組み合わせて、日常的なウォーキングを取り入れてみることから始めると良いでしょう。
まとめ
- 骨粗鬆症は、骨の代謝のバランスが崩れて骨が脆くなる疾病です。
- 骨粗鬆症のリスク因子には、喫煙・多量の飲酒といった生活習慣だけでなく、閉経や40歳以上の年齢といった不可避なものもあります。
- FRAX®︎を用いることで、向こう10年の骨粗鬆症による骨折のリスクがわかります。
- FRAX®︎で骨粗鬆症による骨折のリスクが15%を超える場合は、骨密度の測定をお勧めします。
- カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動で骨粗鬆症と転倒による骨折を予防しましょう。