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《Column vol.29》骨粗鬆症治療のゴールは?いつまで治療を続けるの?

《Column vol.29》骨粗鬆症治療のゴールは?いつまで治療を続けるの?

はじめに

骨粗鬆症と診断を受けて、骨粗鬆症の治療が開始されたら、何を目安にいつまで治療を続ければいいでしょうか?
目に見えない骨の中のことで、一般的には症状は乏しいため、いつまで治療を続ければいいか悩むことがあるかもしれません。また、骨粗鬆症と診断されたタイミング、場所にもよると思いますが、どうしたら骨粗鬆症が改善したと考えられるのでしょうか?一般的な治療効果の判定は「骨密度」が指標になると考えられます。

骨密度とは

骨密度(骨の量:骨量)とは骨の強度を表す指標のひとつとされています。この骨密度は一定容積の骨に含まれるカルシウム・マグネシウムなどのミネラル成分の量を示しています。

骨密度を測定する検査は、様々な骨密度検査があります。
このコラムでは、X線を使用する機器や超音波を使用する機器など数種類ある中でDEXA法(Dual Energy X-ray Absorptiometry法)という2種類のX線を使用する方法の結果を記載します。

骨密度検査にて、「脊椎(背骨)」と「大腿骨(股関節/脚の付け根)」の2か所(どちらかの選択も可能)の骨密度検査が行われます。その結果の中でYAM(Young Adult Mean)という値は若年成人平均値と比較した数値(%)が表示されます。このYAMが80%以上は正常、70~80%では骨量減少、70%未満になると骨粗鬆症と診断され、治療適応となります。

診断の経緯

通院で「骨粗鬆症」の診断を受け、治療が開始された場合

ケガや手術を伴わない骨折などのきっかけや検診、自身の身体が気になり、骨密度検査を受けた場合は、注射や内服薬など様々な種類と頻度の治療選択肢があります。治療を開始後は医師の勧めるタイミングで骨密度検査を行い、治療効果を確認しましょう。

入院で「骨粗鬆症」の診断を受け、治療が開始された場合

上腕骨近位端骨折(肩の骨折)や橈骨遠位端骨折(手首の骨折)、脊椎椎体骨折(背骨の骨折)、大腿骨近位部骨折(股関節/脚の付け根の骨折)を機に骨粗鬆症と診断されて骨粗鬆症治療が開始された場合、骨粗鬆症治療はいつまで行えばいいでしょうか?
「痛みがとれるまで?」、「歩けるようになるまで?」、「退院するまで?」と様々な相談を受けることがあります。答えはいずれも異なり、骨密度の改善が得られるまで治療を継続しましょう。特に、上記の骨折は一度骨折してしまうと、他部位の骨折リスクが高まります。2回目以降の骨折をしないようにしっかり、骨粗鬆症治療を行いましょう。

いずれの場合も骨密度検査を行い、骨密度検査が改善するまでは骨粗鬆症治療が必要と考えます。

治療継続の必要性

では、骨密度が改善するまではどのくらいの時間がかかるのかというと数日~数カ月ではなく、半年~数年の治療継続が必要です。すなわち、「痛みがとれたら骨粗鬆症治療は終わり」や「退院したら骨粗鬆症治療は終わり」ではないということが言えます。

骨粗鬆症治療は米国の報告では、約45%の方が1年以内に治療継続が行われなかったとされています。しかし、治療開始後2年間継続をした方は、ほとんど治療を途中で終了してしまう方がいませんでした。治療継続のポイントは治療効果を確認しながら、2年間続けてみることが重要かもしれません。
どの程度骨密度が改善したら骨折予防につながるかの参考は表のようになります。

文献2を引用作成

骨密度治療薬には治療開始から〇年間まで、〇回までと制限のある薬剤もあります。これらの薬剤に関しては、治療期間終了後は骨密度検査の結果などを踏まえて、医師の判断で適した骨密度治療薬への切り替えが重要です。

骨粗鬆症治療は結果が出るまで、コツコツと行うことが重要です。上記で述べた治療を途中で終えてしまわないようには2年間と長い期間の治療が必要ですが、1人ではなかなか難しい場合もあります。そのためにも医師やメディカルスタッフ、骨粗鬆症マネージャーと共に一緒に治療継続を行いませんか?

<参考文献>
1) Solomon DH, Avorn J, Katz JN et al. Compliance with osteoporosis medications. Arch Intern Med. 165(20):2414-2419,2005
2)Bouxsein ML, Eastell R, Lui LY et al.:FNIH Bone Quality Project. Change in Bone Density and Reduction in Fracture Risk: A Meta-Regression of Published Trials. J Bone Miner Res.34(4):632-642,2019

この記事を監修しました

栗田 慎也

栗田 慎也 / 東京都立病院機構 東京都立大久保病院 リハビリテーション科 主任 / 理学療法士・骨粗鬆症マネージャー・認定理学療法士(運動器・脳卒中・神経筋疾患・疼痛管理)

2009年に理学療法士として、急性期病院や回復期リハビリテーション病院での勤務に加えて、非常勤として整形外科クリニックで勤務経験あり。2022年に日本骨粗鬆症学会が定める骨粗鬆症マネージャーを資格取得し、日々患者さんへの骨粗鬆症の治療啓発を行っている。また、勤務した2施設でInternational Osteoporosis Foundation(IOF)でSilver Standard(銀賞)を受賞している。

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