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「医療安全チームの効果的な運営をしたいけど、何をしたらよいかわからない」や「転倒や転落などの事故を未然に防げる体制を強化したい」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
株式会社Magic Shieldsでは、看護管理者の皆様に向け医療安全チームの運営について考えるWEBセミナーを開催いたしました。
今回は、独立行政法人国立病院機構岩国医療センター 前看護部長 長谷川 美加氏による講演を実施しました。
ご自身のご経験を踏まえながら、医療安全チームの作り方についてお話しいただきましたので、この記事では、その内容を紹介していきます。
安全な医療のチーム作りのために、各スタッフの当事者意識が大切である

安全な医療のチームを作るために、各スタッフの当事者意識が大切となります。
ここからは、医療現場における当事者意識について詳しく解説していきます。
当事者意識とは
医療現場における当事者意識とは、個人が与えられたミッションに主体性や責任を持ち、自分事として働きかけることができるということです。
個々の当事者意識が高いと次のようなメリットがあります。
- ・仕事に対して主体的に取り組むことができる
- ・組織として学習して成長していける
- ・個々の責任感がうまれる
逆に当事者意識が低いと、「やらされている感」を持ちながら業務を遂行することとなり、他責思考になってしまいます。
組織として、あらゆるリスクを回避していく中で、この当事者意識はより重要なものとなります。
医療現場では、さまざまなことを他人事とせず、自分事として捉えて責任を持つことで、全体の成長につながっていくのです。
なぜ当事者意識はスムーズに進まないのか
イギリスの格言に「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という言葉があります。
これを医療現場に置き換えると、管理者が各スタッフに一生懸命、医療安全のための知識や方針を伝えても、本人がやる気にならないと継続して実施していくことは難しいでしょう。
成長意欲があるスタッフには、自ら学び、吸収していけますが、一方で一部ではそれができず他責思考から抜け出せないスタッフもいます。
そういった一部のスタッフには、学習意欲を持たせるための工夫をしていくことが大切です。
例えば、わかっているつもりで実際にできていないという状況から放置しないことです。
理解レベルをあげていくためにはステップがあります。
それは次のとおりです。
- 知っている:基本的な業務を理解しており、指示に基づいて一部実施ができる状態
- やったことがある:基本操作は一人ででき、一部応用もできる状態
- できる:専門性が求められる複雑なケースにも対応できる状態
- 教えられる:相手のレベルに応じて教え、上達させられることができる状態
しかし、このステップがスムーズに進まない現状に悩まされる方が多いのも事実です。
その大きな理由は次のとおりです。
- ・インシデントが多すぎて緊急事態に気づかないことがある(感性が鈍る)
- ・人手不足で多忙すぎて余裕がない(外に意識を向けることができない)
- ・変化への抵抗から短絡思考になりがちになる(パターン化された直線思考が楽に感じてしまう)
こうした現状を改善するために「考える」ということをしていくことが大切です。
また、居心地のよい場所、いわゆる「コンフォートゾーン」から抜け出し、考えるという選択をするスタッフを後押しできる環境づくりも重要になります。
当事者意識を高めるための具体的な取り組みについて

各スタッフの当事者意識を高めるためには、組織全体で具体的な取り組みを行っていくことが大切です。
ここからは、当事者意識を高めるための具体的な取り組みについて解説していきます。
当事者意識を高めるための目標設定
当事者意識を高めるためには、目標設定が大切です。
目標設定は、組織、もしくは上長から言われるがままのものになっていたら意味がありません。
各個人がそれぞれの課題に沿って目標設定をすることが大切です。
例えば、転倒・転落に関する目標設定だった場合、転倒を0にするという目標は難しいかもしれません。
しかし、転倒によって、ADLに影響しない方法を考えることは可能です。
そのために、内的要因(患者側リスク)や外的要因(環境リスク)を考えたり、早期発見をするための工夫をしたりすることが大切なのです。
また、転倒を防ぐために、データに基づき焦点を絞り込んで実施していくようにしましょう。
転倒を防ぐためにどのようなデータをとり、誰が精査していくのかもあらかじめ決めておくとスムーズです。
職員へのサポートの仕方
職員の仕事へのモチベーション維持を考えるうえで、小さな成功体験「スモールウィン」を作っていくことも大切です。
インシデントは、どうしてもマイナスな部分に意識が向きがちです。
厳しい環境の中で、目標設定に対しての小さな成功体験を少しずつ積み上げると、「思ったより悪くない」「案外いけそう」などの気持ちにさせ、より継続的に実施しやすくなります。
そのためには、目標をまず具体化・焦点化して、できるだけ早期に実現できるものに設定していくことが重要になります。
小さな成功体験の積み重ねにより、達成感や肯定感を味わうと、実行メンバーの当事者意識が高まるでしょう。
お互いに褒め合ったり、感謝を伝えたりしていくことも大切です。
危機感の醸成
また、スタッフに危機感を持たせることも当事者意識を高めるための一つです。
危機感を持つと、よりリスク管理に意識が向きます。
人は、何かを得る可能性よりも失う可能性により敏感になるからです。
事故が起こった後のことに対し、具体的なイメージをしていくように仕掛けるとより緊張感を高めることができます。
例えば次のようなイメージ作りです。
- ・事故の後、患者やご家族はどうなるのか
- ・事故の後、自分自身はどうなるのか
- ・事故の後、組織はどうなるのか
これまでの事例を用いてイメージしていくと、よりインパクトが増します。
事故が起こってしまう前に、事前にその後のことをイメージをしておくことでリスク回避につながります。
メンバーやリーダーへのサポート
安全な医療チームを作るためには、メンバーやリーダーのサポートも大切です。
チームの成熟度に合わせて、適切なサポートをしていくことに効果が生まれます。
チームの成熟度には、段階があります。
次のようなステップです。
- 形成期(チームの形成)
- 混乱期(ぶつかりあう)
- 規範期(共通の規則や役割が形成される)
- 実行期(チームとして成果を出す)
- 解散期(チームの終結)
よく混乱期に突入した際にチームリーダーが自責の念を感じ、モチベーションを下げてしまうことがあります。
しかし、実際にはチームの成熟度によって混乱期は起こり得ることですので、それを理解していれば適切な対策ができるのです。
現在のチームの成熟度がどのあたりにいるかを認識し、適切なサポート・アプローチをいていくことが大切です。
また、スタッフ個々の当事者意識を高めるために心理的安全性の高い環境を作ってあげることも大切です。
心理的安全性の高い職場は、ぬるま湯の職場ではありません。
心理的安全性の高い職場というのは次のような特徴があります。
- ・話しやすい
- ・助け合いができる
発言しやすく、また助け合いができる雰囲気の職場では心理的安全性が高く、個々の能力が発揮しやすいでしょう。
個々の力を存分に発揮できるような職場の雰囲気づくりを意識していくと、より安全な医療チームがつくりやすくなります。
まとめ

いかがでしたでしょうか。
医療現場で安全性を担保していくことは、大きな課題と言えると思います。
安全性を高め、患者様により質の高い医療サービスを提供していくためにも、スタッフ個々の当事者意識を高めていきたいところです。
今回のウェビナーついて、もっと詳しく知りたい方はぜひアーカイブ動画をご覧ください。
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