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【ウェビナーまとめ記事】看護管理者のための特別セミナー ~多職種チームの作り方のすべて​~ 《Column vol.58》

【ウェビナーまとめ記事】看護管理者のための特別セミナー ~多職種チームの作り方のすべて​~ 《Column vol.58》

  • ・身体拘束最小化や転倒転落事故の防止に取り組んでいるけど、思うように進めることができていない
  • ・多職種チームの立ち上げを依頼されたけど、どうしたらよいかわからない

このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

株式会社Magic Shieldsでは、看護管理職の皆様と共に多職種チームの運営について考えるWEBセミナーを開催いたしました。

今回は、日本赤十字社 医療事業推進本部 医療の質・研修部 参事 黒川美知代 氏よりご講演いただきました。

多職種によるチーム医療の具体的な効果や、変革を成功させるための8段階のプロセスについて解説していただきましたので、この記事では、その具体的な内容を紹介していきます。

チーム医療(多職種連携)について

チーム医療について、まずは基本的なことを理解しておきたいところです。

ここからは、チーム医療について詳しく解説していきます。

チーム医療(多職種連携)とは

多職種による専門的な組織横断チームで活動する体制のことを指します。

多種多様なメディカルスタッフによる高い専門性を用いて、患者参画を重視した質の高い安全・安心な医療サービスの提供を目指します。

そのために大切なのは、チーム内で目的と情報を共有し、業務を分担しながら連携・補完し合うことです。

多職種で多面的・多角的な介入をすることで、組織として医療の質を向上させることを目的としています。

参照:日本赤十字社 チーム医療推進によるガイドライン 第2版

チーム医療がもたらす具体的な効果

チーム医療がもたらす具体的な効果は次のとおりです。

  • ・医療・生活の質向上:疾患の早期発見や回復促進、重症化の予防など
  • ・医療スタッフの負担軽減:医療効果の向上により負担の軽減につながる
  • ・医療安全の向上:医療の組織化や標準化を通じ、安全性が高まる

多職種による医療チームをつくることによって、患者様に対しての医療・生活の質や安全性の向上だけでなく、医療スタッフの負担を軽減する効果も期待できます。

参照:厚生労働省「チーム医療の推進について」

医療チームをつくるときの問題と解決方法

医療チームをつくるときによく問題にあがるのが次の3つです。

  • ・人がいない
  • ・時間がない
  • ・負担感があり、やりたくない

医療チームをつくろうとすると上記3つのような意見がよく聞かれます。

しかし、こちらの問題に対しては解決することが可能です。

人材不足については、医療現場の慢性的な問題でよくあがりますが、医療チームは多職種スタッフが3職種集まっていれば成り立ちます。

多くのスタッフを巻き込まなければ成り立たないと誤解されがちですが、人手不足で稼働が難しそうな場合はまず3職種のメンバーで始めるようにしましょう。

また、多忙で時間がない問題についても、いきなり多くの時間を使う必要はありません。

まず30分くらいの時間を確保するようにし、医療チームとしての活動の時間にあてていくようにしましょう。

懸念されがちな時間ロス回避のために、重点思考を大切にして、優先順位をつけていくことも大切です。

最後の負担感に関しては、スタッフの本音かもしれません。

しかし、診療加算のためには必要なことですので、ぜひ積極的に実施していきたいところです。

ただし、やらされ意識では楽しんでできません。

本質を捉えることができるメンバーで医療チームを形成するのが理想的です。

変革を成功させる8段階のプロセスとは

医療チームにより組織に変革を起こしたい場合は、それを成功させるためのプロセスを踏んでいくことが大切です。

ジョン・P・コッター氏による書籍「カモメになったペンギン」では、変革を成功させる8段階のプロセスを次のように記載しています。

  1. 1.危機感を高める
  2. 2.変換推進チームを作る
  3. 3.変換のビジョンと戦略を立てる
  4. 4.変換のビジョンを周知徹底する
  5. 5.行動しやすい環境を整える
  6. 6.短期的な成果を生む
  7. 7.さらに変革を生む
  8. 8.新しい文化を築く

ここからは、8段階に沿って変革を成功させる具体的な段階について解説していきます。

出典:書籍「カモメになったペンギン ジョン・P・コッター」

1.危機感を高める

まず、現状におきている放置することができないことを捉えて、危機感を認識しておくことが大切です。

特に次のようなことに注視するようにしましょう。

  • ・よくないと思うこと
  • ・おかしいぞ、と思うこと
  • ・インシデント報告に上がらない程度でも些細な違和感

上記のような違和感に気づいたら、事実確認等をしたうえで課題として吸い上げるようにしましょう。

例えば、認知症患者様に対し、転倒予防として身体拘束が実施されているとします。

それに対し、危機感や問題意識を持ち、どのようなリスクがあるのかを話し合うことで本質的な問題解決へとつなげることができます。

現場職員の気づきや危機意識、疑問を埋もれさせないための工夫が重要です。

2.変換推進チームを作る

多職種による医療チームを立ち上げます。

適切なリーダーやメンバーの特徴を次にまとめました。

リーダー開始時は医師や看護師長が好ましい(現場とトップをつなぐ役目ができる人)柔軟な対応ができる人本質を捉えて問題意識を持てる人
メンバー取り組む課題に関係する職種である人リーダーシップがとれる人アイデアや好感度、行動力のある人
オブザーバー問題に関連する専門的知識がある人分析力がある人
事務局チームの窓口として日程調整や議事録作成ができる人
調整者全体の進捗管理ができる人

想像力豊かなアイデアを持った人に対し、知識と論理が支える関係が理想的です。

また、好感度や尊敬を集められるような人がメンバーにいると、より周囲を巻き込みやすくなります。

変革を成功させる医療チームをつくるうえで、適切な人選も大切な鍵となります。

3.変換のビジョンと戦略を立てる

チームを立ち上げたら、変革のビジョンと戦略を決定しましょう。

例えば、転倒予防を目的とした身体拘束に対し廃止を目指す場合、次のようなことを具体的に決めます。

  • ・院内基準を見直すまでの期日
  • ・身体拘束実施率の評価方法(毎月各部署の実施率を集計する等)

具体的にしていくことで、メンバー各々がアクションを起こしやすくなり、また組織への周知もしやすくなります。

4.変換のビジョンを周知徹底する

変革のビジョンや戦略は、なるべく多くのスタッフの理解や賛同を得ることが成功への一歩です。

結成した多職種チームがやろうとしていることを、皆に周知するようにしましょう。

具体的な方法は次のとおりです。

  • ・広報を活用する
  • ・院内キックオフの場を設定する

院内キックオフは院長が参加できる日時で設定し、院長挨拶を依頼するのがおすすめです。

そうすることで、より組織として優先的に実施していかなければならない意識が高まります。

また、質疑応答の場を設け、ネガティブな意見も受け入れるようにしましょう。

変革に対するスタッフの疑問や不安をあらかじめ解消しておくことで、巻き込みやすい雰囲気をつくることができます。

5.行動しやすい環境を整える

障害はできるだけ、先に取り除いておくことで行動しやすい環境が整います。

例えば、院内キックオフで出たネガティブな意見について、解消する方法を模索してみましょう。

新しいことを始めようとすると、固定観念の強い保守的な意見が出ることも多いです。

そういった場合には、やってみて調整すること、そしてその成果から再検討する余地があるということを伝えることがおすすめです。

例えば、身体拘束を最小化を実現しようとすると、転倒件数が増えるなどといったネガティブな意見が出ることがあります。

転倒件数が一時的に増えたとしても、身体拘束をしないためのケアのコツが掴めてくるとADLが向上したうえでさらに転倒件数を減らすことができます。

活動するときには、「何を目的としているか」のビジョンを明確にしておくと、一時的に状況が悪化してもくじけずに進めることができるでしょう。

また、特にチーム活動に関わる部署・部門に関しては、個別に説明会を行うとよいでしょう。

一緒にやりたい人という好意的なスタッフが現れたら、実践場面での有力な協力者になってもらえる可能性があります。

6.短期的な成果を生む

できるだけ早い時期に、目に見えるはっきりとした成果を上げることも大切です。

一事例でもよいので、短期的な成果を活動報告NEWSなどで周知するようにしましょう。

「職員の皆様のおかげで〇〇の成果が出ています!」などと記載するとインパクトが増すでしょう。

また、医療チーム活動開始後の不具合があれば、その調整が必要かを検討します。

現場とのコンフリクトが発生した場合には、もう一度説明会を実施するなど、早期に調整するようにしましょう。

7.さらに変革を生む

ひとつ成功を収めたら、定着に向けた活動を進めていきましょう。

定期的に評価をしながら活動をしていき、定着に向けてプロジェクトを終えるか継続かを検討していきます。

短期達成型のチームの場合は、目標達成後の作成マニュアル等の管理方法の検討や引継ぎが必要です。

また、長期継続型チームにおいては、次なる目標に向けて活動に取りかかるようにしましょう。

8.新しい文化を築く

活動の定着を図るために、成果が出たら公表しましょう。

その際には、医療の質の指標や数値評価など、わかりやすい改善の経過を用いるのが適切です。

積極的に公表することで、実施してきた活動そのものが新しい文化になっていきます。

院内発表や学会発表、広報誌などでアウトプットしていくことがおすすめです。

チーム活動において大切なこと

チーム活動において大切なことがいくつかあります。
ここからは、チーム活動中の課題や大切なポイントについて解説していきます。

軌道にのるまで

軌道にのるまでは、チーム内の目的意識が不安定になる時期もあるでしょう。

そういったときにも、多職種により医療チームをつくることへの本質を見失わないようにしましょう。

活動の方法は手段であり、目的ではありません。

活動全体の方向を見失わないようにすることが大切です。

また、医療チームが決めたことを提示していくだけでは、組織内のスタッフには浸透しません。

事前に活動開始を周知しておき、受け入れられるための土壌をつくっておくことも重要になります。

その他、軌道にのるまではチーム活動をトップと一体となり、行っていけるための調整をこまめにするようにしましょう。

継続のために

継続のために大切なことは次の3つです。

  • ・チームを育てる
  • ・職種間の違いを活かす・調整する
  • ・PDCAサイクルを回して、変化に適応し続ける

重点志向で着実に活動を続けることが大切です。

できることを積み上げてチーム内で成長をしていきましょう。

また、職種間での意見の違いを尊重しつつ、話し合っていくことも重要になります。

多様な意見から優先度を決めて、活動を調整していきましょう。

そして、計画・実施・確認・処置のPDCAサイクルを回し、変化がおきても柔軟に対応していくとよいでしょう。

医療チームと実践者(現場のスタッフ)が協力し合えるために

活動を実施していく中で、現場スタッフとの間にコンフリクトが起こることがあります。

例えば次のようなことです。

  • ・医療チームの意見が上から目線に思えて反発心が沸く
  • ・決定したことを現場スタッフが実践しない
  • ・課題を医療チームに丸投げされる
  • ・主治医と医療チームの意見に相違があり現場スタッフが困る

こういったすれ違いが生じた場合には、うまく調整していく必要があります。

コンフリクトの要因をまずは考え、対策をしましょう。

現場スタッフと協議し、意見のすり合わせの場を設けることも大切です。

まとめ

医療現場の安全性を確保するためには、質の高い医療チームをつくっていくことが大きなポイントとなります。

課題解決のためにも、適切な段階を踏んで、チーム力を育てていきたいところです。

株式会社Magic Shieldsでは、今後もさまざまなウェビナーを開催していきます。

今回のウェビナーついて、もっと詳しく知りたい方はぜひアーカイブ動画をご覧ください。

この記事を監修しました

中村 亜美

中村 亜美 / 介護福祉士・フリーライター

専門学校の卒業と同時に介護福祉士を取得し、そこから計12年程、特別養護老人ホームで介護スタッフとして勤務。現在は、フリーライターとして、在宅介護者や介護スタッフ、事業者向けのコラムなどを執筆している。(株)Magic Shieldsのコラムでは、介護施設内の課題解決などに着目し、経験を踏まえながらわかりやすい記事の作成を目指している。

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