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【ウェビナーまとめ記事】身体的拘束の最小化と訴訟リスク~精神科病院の対策事例をご紹介~《Column vol.59》

【ウェビナーまとめ記事】身体的拘束の最小化と訴訟リスク~精神科病院の対策事例をご紹介~《Column vol.59》

「身体的拘束の最小化を目指したいけど転倒事故が増えないか心配​」「転倒事故が増えることによる訴訟のリスクに不安を感じる」と悩まれている方もいるのではないでしょうか。

数多くの病院に「身体的拘束の最小化」のための課題解決をサポートしている株式会社Magic Shieldsが、精神科病院様に特化した内容で、明日から実践できる「身体的拘束の最小化」についてわかりやすく解説したWEBセミナーを開催しました。

その具体的な内容を、今回は紹介していきたいと思います。

精神科病院の身体的拘束に関する課題

ここからは、精神科病院の身体的拘束に関する課題を解説していきます。

身体的拘束最小化の必要性について

精神科病院の身体的拘束は、年々増加しています。精神疾患患者様は年々減少しているにも関わらず、身体的拘束については増加傾向にあります。

精神科病院の身体的拘束に関する課題の全体像としては、次のとおりです。

  • ・身体的拘束をやむを得ず行うことで入院が長期化し、診療方針の改定により加算がとれなくなる
  • ・やむを得ない事情を除いて身体的拘束を行う場合、虐待に該当する
  • ・身体的拘束をやめると、転倒が増加する

昨今、身体的拘束を原則禁止とし、一般病院や介護施設などで最小化のために取り組みを進めています。

今後は地域包括ケアシステムの構築に向け、ますます医療・介護業界全体で身体的拘束の最小化への取り組みをしていく必要があることが予想されます。

報酬改定により、精神科病院でも身体的拘束の最小化に対する取り組みが必須となる可能性がありますので、早めにそれに向けて対策をしていきたいところです。

身体的拘束や転倒による訴訟リスクについて

精神的病院で身体的拘束をしたことによって訴訟された事例は、過去複数ありました。

例えば、精神保健指定医がやむを得ない身体的拘束への判断をし、その後エコノミークラス症候群を引き起こした事例では、裁判によって精神保健指定医による身体的拘束の判断は違法であると判決を受けました。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準によると、やむを得ない身体的拘束に該当する条件は、次のとおりです。

身体的拘束の対象となる患者は、主として次のような場合に該当すると認められる患者であり、身体的拘束以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。

ア) 自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合

イ) 多動又は不穏が顕著である場合

ウ) ア又はイのほか精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合

引用:○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準

訴訟による裁判では、以下の考え方で判決が左右されます。

  • ・予見可能性=事故が起きるかどうかの予測
  • ・結果回避可能性=予測したうえでの対策

上記の事例については、身体的拘束含む判断が正しいものであったかが論点になります。

「身体的拘束以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。」と記載がありますとおり、訴訟に発展した場合は、〇〇したら事故が防げたと後出しのように言及されることが多いです。

色々な対策をしていても、一つ対策が足りていなかったら敗訴してしまうのが訴訟の怖さでもあります。

しかし、やむを得ない身体的拘束や転倒事故を0にするのは難しいのが現状でしょう。

そういった状況を踏まえ、訴訟への対策には、転倒後の予後対策(二次予防)が大切になります。

訴訟につながるのは大きな事故でありますが、一方で転倒事故が起こってしまっても、大きな怪我などを防ぐことができれば訴訟には発展しない可能性が高いです。

今後は、二次予防の強化に力を入れていきたいところです。

身体的拘束の最小化のための具体的な方法

精神科病院における認知症患者様の割合は、年々増加傾向にあります。

認知症患者様は身体的拘束の対象になりやすく、その理由は転倒予防によるものです。

しかし、必ずしも身体的拘束は転倒・事故の防止にはつながりません。

また、身体的拘束の弊害によるジレンマを感じながら日々従事されている看護師は多いです。

さらに、身体的拘束の最小化は医療・介護業界全体として、さらに強化される可能性がありますので、課題を先延ばしにするのではなく話題になっている今、組織を動かすように働きかけていきたいところです。

身体的拘束の最小化と転倒予防

よく「身体的拘束の最小化を目標にすると転倒件数が増えるのではないか」といった不安の声を耳にします。

日本精神科看護学術集誌の一部によると「身体的拘束の減少に伴い転倒転落件数は増加するが、身体拘束による重大な事故防止効果の相関はない」とされています。

つまり、身体的拘束で転倒・転落事故の一部は防げたとしても、重大な事故の発生件数は抑えられないということです。

身体的拘束で重大な事故の防止に効果がないのであれば、なおさら最初化に向けて進めていきたいところでしょう。

また、身体的拘束の最小化を進めていくのと同時進行で、重大な転倒事故の予防も実施していきたいものです。

一次予防と二次予防について

転倒事故予防には、一次予防と二次予防があります。

一次予防は「転倒させないための対策」、二次予防は「転倒したとしても大きな事故につながらない対策」です。

従来の転倒予防といえば、一次予防が特に注視されてきました。

例えば、センサーの設置や見守りなどがそれに該当します。

しかし、転倒はある程度までは減っていくが0になるのは難しい現状があります。

実際に環境の設定やリハビリの実施、内服薬の調整など一次予防をして転倒予防を図った事例では、転倒件数が半分には減少したものの、0にすることはできませんでした。

こうした現状を踏まえ、今後大切になるのは「転倒したとしても大きな事故につながらない対策」の二次予防です。

二次予防の製品の特長

最近では、転倒の二次予防製品として多くのものが開発・販売されています。

主に次のとおりです。

  • ・低床ベッド
  • ・ヒッププロテクター
  • ・緩衝マット
  • ・ころやわ(マット・フロア)
  • ・ジョイントマット
  • ・衝撃吸収床

上記は、転倒しても大きな事故につながらないように開発された製品となります。

特に、ころやわは、大学と共同研究や実証実験を行い確認しながら開発されているため、より機能性の高い商品です。

転倒した衝撃を吸収してくれるため、大きな事故につながりにくいのが特徴です。

さまざまな二次製品のなかから、各病院に合ったものを導入していくことをおすすめします。

まとめ

今後の医療・介護業界の流れを加味し、身体的拘束の最小化を目指していきたいところです。

また、身体的拘束の最小化への取り組みを進めるうえで、転倒予防への対策を重視していくことも大切になります。

転倒事故を減少させることはできても全て防ぐことは、現状難しいため、取り組みを進めるなら二次予防の製品の導入がおすすめです。

二次予防の助けとなる「ころやわ」も、ぜひ導入を検討してみてください。

なお、株式会社Magic Shieldsでは、今後もさまざまなウェビナーを開催していきます。

今回のウェビナーついて、もっと詳しく知りたい方はぜひアーカイブ動画をご覧ください。

この記事を監修しました

中村 亜美

中村 亜美 / 介護福祉士・フリーライター

専門学校の卒業と同時に介護福祉士を取得し、そこから計12年程、特別養護老人ホームで介護スタッフとして勤務。現在は、フリーライターとして、在宅介護者や介護スタッフ、事業者向けのコラムなどを執筆している。(株)Magic Shieldsのコラムでは、介護施設内の課題解決などに着目し、経験を踏まえながらわかりやすい記事の作成を目指している。

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